わが畏友の阿部恒夫岳兄が4月の末から5月の初めにかけて、(彼の言葉を借りれば)カナディアン・ロッキーヘ「遠足」に行った。ロッキー山脈の遠足とはシヤレている。漱石の高等遊民じゃないが高等遠足だろう。ちょうど私はその頃、そのロッキー付近の山の本を、二〜三冊買ったので紹介しよう。といっても、ヒマラヤやアルプスの先鋭的な山岳書ではなく、これも遠足山岳書といった方が適切であろう。 勿論、これらは古書店で買ったものばかりである。最近、Bookoffとか古本市場のような、全国チェーンの古本屋があちこちに出来て、今では洋書も置いている。
@ 「MOUNT ST.HELENS」 Graphicart Center 1980刊
このセント・ヘレンズ山 く2,950m)は,米国ワシントン州の山で、シアトルの南約130knのところにある。富士山よりも富士山らしい山で、カスケード山脈に属する。近くにレイニア山(4,392m〜アルマン氏の世界百名山の一つ〉や、アダムス山(3,751m)・フッド山(3,425m)がある。いずれも『コンサイス外国山名辞典』に載っている。アメリカ合衆国内では、モンタナ・ワイオング・コロラド・ニューメキシコ州にロッキー山脈が走っており、東部海岸に沿って海岸山脈と、その西にカスケード山脈が平行して南下している。この二つの山脈の間に、シアトルやポートランドがある。この山が何故有名かというと、1980年5月18日、大爆発を起し、北面の高度巾400m程が吹き飛んだのである。20世紀の代表的な火山爆発の一つであった。本書はB4変形の大型本で、爆発と同年に発行されている。前半は優雅な山を、後半は大爆発の写真が数多く載っている。そういう意味では貴重な本であろう。
各々の写真は実に美しい。歴史と自然の両面から山を取り上げている。
A 「ザ・カナディアン・ロッキー」 1989刊
B 「British Columbia 」1994刊
どちらもB4変形の大型判 出版社:WhiteCap社
Aは和文であるが洋書である。というのは、カナダの出版社が香港で印刷してわが国に輸出し、洋書の販売ルートを通じて書店に流した本である。したがって和書特有の「奥付」がない。洋書式に中表紙の裏に発行記載がある。
BはAと同じ出版社だが、こちらは英文である。BritishColumbia州の歴史と観光(登山やFishing・Golfなどを含めて)の書である。全7章からなり、そのうち1章をロッキー山脈に当てている。だからAと重なる点もある。Aが自然に重点を置いているのに対し、Bは観光に重点が置かれている。しかし、山や湖の写真はすばらしい。
さてカナダのロッキー山脈は、ユーコン州の西からアルバータ州に入り、半分はBC州とアルバータ州の境界を南下してアメリカに続いている。
なお海岸に沿って、アメリカ合衆国から続いている海岸山脈〈Coast Mountains)がある。
ローガン(6,050m先の百名山)やセントイライアル山(5,489m百名山〜ユーコンとアラスカの境)はこの山脈に属している。
C 「Eternal Landscape」 Knof社 1988刊 B4変形大型判
D 「Desert Light 」 Chronicle Book社 1993刊 A4変形
Cユタ・コロラド・アリゾナ・ニューメキシコ州は、Great South West(偉大なる南西部)といわれている。それらの州をコロラド河とリオ・グランデが流れている。ここは砂漠地帯で、映画『駅馬車』に出てきたような砦岩や、レインボーブリッジが各所にある。この二冊の本は、Grand Canyon(大渓谷)を中心に、多くの写真が載っている。グランド・キャニオンといえば、ローヴェの交響曲:『大渓谷』が想い浮かぶだろう。第三楽章の馬に乗って渓谷を降登するシーンや、第四楽章の豪雨や洪水のシーンは有名である。見開き4ページの横長の写真がいくつもある。
Dは、見開き左が写真で、右が偉大なる南西部のオマージュのエッセイが載っている。
E 「長江三帆」 四川人民出版社 1993刊 A4函カバー付
この写真集は、全国ネットの古本屋で僅か¥105で買った。文章は漢字だから、大体の意味はわかる。序曲(序言のこと)に、
長江三峡、中国十大風景名勝区之一。三峡是以大江上的一段奇特航道而著称於世的。
1000多年前、唐代大詩人杜甫的詩句“衆水会培万、瞿塘争一門”、活畫出了三峡流変
幻的壮偉風景。
とある。三峡とは宣昌市より上流の西陵峡・巫峡・嬰塘峡の三つで、長江(揚子江)の両岸に剣山が迫っている。このあたりが掲子江の中流である。特に山は巫峡付近に多く、神女峰・飛鳳峰・集仙峰・浄壇峰が写真に載っている。(コンサイス外国山名辞典にはない)。この写真集には峡・山岳だけでなく、風俗や名所旧跡も載っている。西陵峡付近は、王招君や屈原の生地でもある。
F 「ROMA AMOR」 Nagel社 1965刊
お堅い本ばかりなので、ちょっと軟らかい本も紹介しょう。この本の題僉は‘ローマの愛’だが、内容は古代ローマの愛欲についての写真集である。出典一覧を見て驚いた。ほとんど80%までが、ナポリ美術館の所蔵である。という事は、ボンベイから出土した壁画だろう。
AD79年、ヴェスヴイオ火山く1,281m)が大噴火してボンベイの市街は埋まってしまった。それが18−19世紀にかけて、発掘され出した。もし噴火がなかったら、かかる淫らな壁画は中世キリスト教権力によって破壊されていたであろう。何が災いで何が幸運か、歴史の皮肉であろう。
この山は、深田久弥『世界百名山』に参考として載っている、例の百名山にも名を連ねている。1880年にヴェスヴイオにケーブルカーがついた。
それを記念して、有名な『フニクリフニクラ』が作詞作曲された。今ではナポリ民謡となっている。昔、『IL VESUVIO〜com'era
eoml'e』というエハガキ集を古本屋で買った。その中にFunicolare(登山電車)が一枚ある。1906年にも大噴火を起していて、それも載っている。多分、これはそれ以降、第一次世界大戦(1913)前に発行されたのであろう。今では貴重な文献かも知れない。
和書は全てBook offで買った。
G 「スペイン巡礼賛歌」 には、モンセラートの山塊が載っている。奇怪な山々である。
H白川義員 「『HIMALAYAS」 大型愛蔵版 カバー函入り
I 「地球の素顔」 小学舘 B4変形
ランドサットから掘った写真。アルプス・サハラ砂漠・ヒマラヤ・富士山・アンデス・南極などなど。地図では、光は北から当たっているのに慣れているせいか、北半球の山岳写真は凹凸が逆になる。だから、本を逆さにして見ると凹凸が正常にハツキリ感じられる。
以上10冊全て併せても、¥7,000強であった。
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