山岳遭難の実態から |
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重廣恒夫 |
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| 先般、「平成18年中における山岳遭難の概況」が警察庁生活安全局地域課から発表されました。その概略は、遭難発生件数は前年比35件増の1417件、遭難者数は前年比169人増の1853人、死者・行方不明者は前年比5人増の278人(遭難者数の15%)。発生件数、遭難者共に、1961年以降、過去最高を示しました。 2006年中の発生状況を10年前の1997年中と比較すると、発生件数602件(173.9%)増、遭難者数892人(192.8%)増、死者・行方不明者81人(141%)増となっています。 山岳遭難事故の分析と対策に長年取り組んでおられる、関西大学の青山千彰教授によると1972年(昭和47年)、団塊世代トップが25歳のときの遭難事故者の世代割合は20歳代66%(特に20〜24歳代45%)、30歳代11%、40歳代6%、50歳代17%だったそうです。まだまだ大学山岳部や山岳会が活況を呈していたことが伺われます。 これを2006年(34後)で見ると、20歳代5.7%、30歳代8.8%、40歳代9.3%、50歳代22.9%(内55〜59歳代14%)、60歳代28.9%、70歳代16.8%、80歳代3%で、山岳遭難の三分の二を若い世代が占めた時代と、50歳以上が三分の二を超える現代との大きな違いに驚かされます。 この数字には、ここ十数年の第三次登山ブームの実態が顧著に現れています。それは中・高齢になって登山をはじめた人はもとより、若いときから登山を継続しているベテランでも、50歳を過ぎた頃から、多くの人々の体力は自分が考える以上に低下しているケースが多いということです。具体的な体力低下の特徴として、50歳前後の年齢から視力低下、脚力低下、平衡感覚の低下など、さまぎまな老齢化の特徴が現れはじめます。これは態様別発生状況で道迷いが714人(38.5%)、滑落286人(15.4%)、転倒204人(11.0%)などの初歩的な事故が多いことが如実に物語っています。特に道迷いについては、若いころから登山を実践しており地図やコンパスの使用に習熟している人達でも、加齢と共に勘違いや油断から道に迷ってしまうケースも多く、なまじ経験があるがゆえに、道を間違えたと認識しながらそのまま無理な下降を続けてしまうなどの傾向が見られます。歳をとるにつれて、反射神経が鈍くなったり、筋肉の力も弱って、いざという時に踏ん張りが利かなくなったりした経験は誰しも持っているのではないでしょうか。 そのためにこれまでなんでもなかった場所でバランスを崩したり、石につまずいたり、木の根にひっかかったりして、転落や滑落事故を起こしやすくなります。 20歳の男性の体力程度を100として、60歳前後でどの位低下するのかというデータがあります。これによると、開眼片足立ち30%以下に低下、脚筋力50%前後、腕立て伏せ40%前後、立位体前屈50%、垂直跳び60%、最大酸素摂取量50%前後に低下しています。 このように全体的な持久カや筋肉の持久カの低下によって、疲労しやすくなるうえに、その回復は遅く、いつまでも残るということがわかります。特に初心者の場合は体力や技術のバックアップがないことや、行動中のエネルギーとなるグリコーゲン補給や水分補給を適切におこなうという知識を持たないことなどもあり、道迷いから転倒・滑落、低体温症などに陥る危険性が増すことになります。 人間は恒温動物です。通常は体温36〜37度で、脳、筋肉、腸、内分泌などすべての機能が正常に働くことで快適な生活が営まれます。しかし、この体温が一度下るとその機能は低下しはじめます。低体温症は気象条件と装備の不備と肉体的疲労によっておこります。肉体的な疲労は、寒さ、濡れ、風が吹くなどの条件下ではそのスピードはさらに速くなります。特に疲労困憊して歩行困難になると体温は著しく下りはじめ、低体温症状になります。低体温症になると、まず低温にもっとも弱い中枢神経が冒され、精神活動の低下がみられるようになります。 その主な症状として、問いかけにたいしてもきちんと答えられない、言葉が不明瞭、全身の倦怠・脱力感、よろめきながら歩く、眠気などの症状がでてきます。さらに症状が進むと、寒さから身を守ろうとしなくなる、思考力が低下する、意識が混濁する、幻聴や幻視などがあらわれる、時には狂躁状態などの症状が現れます。そうなると意識は失われ、やがて死にいたります。山での疲労凍死とされているケースは低体温症による死亡のことをさしています。 ではどうすれば回避できるのか、その対策のひとつとしてまず自分の力量(体力・技術・経験)を見極める必要があります。さらに、暑さ・寒さ・低酸素・空腹・口渇・不眠・不快といった環境ストレスに対する抵抗力、いわゆる防衛体力が低下していることも認識しておくべきです。 これらの低下を防止するのが日常のトレーニングです。その目的は筋肉を鍛え、心肺機能を強化し酸素の摂取量を大きくすることで、バランスのとれた安全で快適な登山をするのに必要な体力を作ることにあります。そのうえで自分の体力にあった山やコースを選ぶことと、途中で道を間違えたり、体調や気分が悪くなったりしたら引き返す勇気を持つことです。限界まで我慢すると重篤な状態になるだけでなく、同行者にも大きな迷惑をかけることになります。自分の能力に見合った登山をおこなうためには、自分で山やルートを選択し、自分で計画を作ることが理想です。自分で作った計画であれば、途中で引き返した方がよいのか、予定通りの行動が取れるのか、自分で判断することが可能です。また登山計画書を家族や登山ポストに投函しておけば、万一の対応を早いものにしてくれます。 閑西支部では多くの会員の方々に活発な登山活動をおこなっていただいていますが、登山の常識や安全を再確認していただき、安全で快適な山登りを引き続き楽しんでいこうではありませんか。 |
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| 昨今、山岳遭難に占める中高年登山者の割合が増加しています。事故を未然に防ぐために、私たち登山者のひとり一人が自己の健康管理に努め、体力維持と登山技術や知識の研鑽を怠らないことが肝要ですが、山岳会としても事故に対する予防と対 策を早急に講じなければなりません。 関西支部では事故発生時における組織としての対応について昨年秋より委員会で検討を続けてきました。検討事項は事前の準備、事故発生時の対応策、対策本部の設置、事後処理など多岐にわたっていますが、まず基本的な問題でありながら案外おろそかにされがちな登山届の提出と緊急連絡カードの携行について実施していくこととなりました。 この間題の重要性を認識し、励行して頂きますようお願いします。 運用基準 1 日本山岳会関西支部会員は以下の山行にあたって「登山計画書(届)」を提出する。 (1)関西支部主催または共催の山行 (2)個人山行(日帰り山行を除く) ア 海外登山、海外トレッキング イ 積雪期、岩登りなど難度の高い登山技術を伴う山行 ウ 宿泊を伴う山行 2.登山計画書(届)提出先は関西支部支部長、副支部長、山行委員長とする。 3.現地登山口に登山届提出所(ポスト)などがある場合は、2に重ねて提出する。 4.登山計画書(届)の様式は支部所定のものとする。(別掲) 5.例会山行の担当者(リーダー)は「緊急連絡カード」を準備し、万一事故が発生した場合 の連絡方法を参加者全員に周知しておくこと。 (付記) 1.上記1の(1)については担当の山行委員が登山計画書(届) を作成・提出する。 2.登山計画書の様式はこのホームページにPDFファイルとして記載している。 (そのまま印刷できます。) 登山計画書(表) todoke-omote.pdf へのリンク 登山計画書(裏) todoke-ura.pdf へのリンク 緊急連絡カード kinkyu-renraku-card.pdf へのリンク また用紙は山行委員からも入手できる。 3.登山計画書の提出方法は、郵送、FAX、メール添付ファイルのいずれでもよい。 (提出先) 支部長 重廣 恒夫 〒662-0052 西宮市霞町5−50−201 FAX 0798−22−0673 shigehiro-ts@asics.co.jp 副支部長 金井 良碩 〒662-0811 西宮市仁川町2-7-17-204 FAX 0798−51−9240 kanai-y@w4.dion.ne.jp 山行委員長 芳村嘉一郎 〒639-1053 大和郡山市千日町22−2 FAX 0743−53-1364 kaichiro@kcn.ne.jp |