関西支部長就任にあたって  重廣 恒夫
 日本山岳会が誕生しての100年、関西支部も創立70周年という節目の年を迎えました。日本山岳会は1956年5月9日のマナスル登頂を嚆矢として、先蹤者達が築きあげた伝統を継承しつつ、常に時代の息吹を取り込んだヒマラヤ遠征や国内登山を実施してきました。しかし、30数年前から大学山岳部の部員や社会人山岳会の会員数が減少しており、これに連動して、会員の高齢化と若年会員の減少が大きな問題となっています。さらに、ここ10年は多くの入会者を迎えるものの新入会員の退会者が増えているという現実があります。
 その背景にあるのは1990年代に爆発的なブームにより、登山界にも押し寄せたレジャー化の波が考えられます。90年代に登場した 「中高年登山者」 は山岳部出身者や社会人山岳会員の高齢化ではなく、いきなり山登りをはじめた中高年のサラリーマン、退職者、主婦達でした。何の準備もなく、健康維持や癒しの目的のためにおこなわれる登山では、山に向かう前の体力や技術の養成はなおざりにされました。装備やツアーに頼る 「山岳旅行」 は当会であっても同様のサービスが求められているニーズヘの対応不足が、新入会員の期待を裏切ることとなり、それが退会の要因になっていることは否定できません。
 山岳会創立の理念とは座標軸を異にする会員の入会が予測される21世紀は人口減少の世紀です。しかも日本は超高齢化への道を進んでいます。山岳会の財産ともいえる人口が減り、少子・高齢化が進む時代に、若年会員の確保や活動の活力を損なわないようにするのは至難の業です。
 既に 「長期改善計画」 や 「長期目標検討」 がおこなわれていますが、これまでに提出された構造改革の答申が骨抜きにならないように、会員全員の意識改革も必要だと考えます。
 支部の大きな問題は既に75%に近い60歳代以上の会員と25%の50歳以下の会員比率にあり、支部運営のために協調の仕組みをどうしていくかが今後の大きな課題となります。
 会員の皆様には理念を見失わず、未来に挑戦し、伝統と革新を継承するために、山岳部や山岳会の後輩の勧誘強化をお願いします。
 昨年は日本山岳会創立100周年・当支部70周年記念事業の一環として派遣した 「西チベット学術登山隊」 の成功がありました。その成果をバネにして、本年も 「中央分水嶺踏査」、「紀伊山地参詣道踏査」 に加えて、海外トレッキングや山岳研究など多岐にわたった活動を進めてまいりますので、会員の皆様の積極的な参加をお願いします。
 70周年という節目の年に、歴史的な変革の機会を失わないように、新しい登山文化を積極的に受け入れ、新たな時代を拓くエネルギーを蓄え、ともに高齢化という大きな波を越え、新しい目標に向かっていくロマンとヒロイズムを持ちながら、偉大な先人のたくましくしなやかな精神が連綿と息づく支部にしたいと考えています。ご協力を
お願いします。