9月に予定していた分水嶺踏査Xが台風のため順延になり、10月に三嶺〜天狗峠〜綱附森〜京柱峠というゴールデンコースを最も紅葉の見頃に縦走するという幸運に恵まれることになった。
28日は徳島自動車道を美馬ICで出て、貞光から見の越を経由して名頃の登山口に向かった。今年は紅葉が遅れているので、10月末でも見の越周辺は紅葉を楽しめた。名頃登山口は昨年、広い駐車場と真新しいトイレが整備されたばかりだ。
準備体操で身体をほぐして出発。しばらく林道を歩いた後、堰堤の横から登山道に入る。この道はずっと奥の登山口に続く三嶺林道が車両通行止めになったことを機に、林道歩きをショートカットするため、廃道になっていたかつての登山道を整備復旧したもので、登山口に続いている。 約30分後に登山口に到着した。紅葉したブナやミズナラの樹林の中を登り、少し汗ばんできたころ、中腹の「ダケモミの丘」に着いた。休憩後、ダケモミ(ウラジロモミ)の林を抜け、そろそろ風衝草地になる手前で、真っ赤な実が鈴なりに付いた、さながら花が咲いたように見える木に出会った。三嶺では知る人ぞ知る「タヌキのかんざし」という名のマユミの古木だ。樹齢は300年ほどらしい。大岩を過ぎ、急な階段状の登山道を登ると、山上の池に着いた。道を左にとれば三嶺頂上、右にとれば三嶺ヒュッテだ。
まずヒュッテに向かい、昼食をとる。平成12年に再建された3代目ヒュッテで、50人収容の立派な小屋。昼食後、国指定天然記念物のコメツツジとミヤマクマザサに覆われた稜線を辿って頂上に向かう。今年の紅葉の色は例年に比べると少し劣るが、それでも充分に美しいと思う。三嶺のコメツツジの紅葉は日本一のツツジの紅葉と信じている。
8月に剣山から縦走してきた時もガスで全く展望がなく今回に期待していたが、残念ながら今回も稜線はガスに取り巻かれ、本来なら目にする事のできる大展望は想像するしかなかった。狭い山頂は私たちを含めて30人ほどの登山者で満員だった。記念撮影後、西熊山を目指して出発した。ミヤマクマザサの緑とコメツツジの紅葉が彩る稜線を、前方西に鋭鋒天狗塚、南は眼下に西熊渓谷、北に祖谷山系を眺めながら歩くことができるのだが、残念ながらすべてが深いガスの中に隠されている。緩やかな起伏の笹原の中を進み、コメツツジの群落が増えたと思って間もなく、西熊山のてっぺんに立った。
頂上から西に下ると、お亀岩のコルを経て、お亀岩避難小屋。平成6年に改築された40人収容の洒落た小屋。嬉しいことに水場が近く、小屋の中には槇ストーブまである。小屋に荷物を置き5人を残して、12人で天狗塚を目指す。地蔵の頭をトラバースすると天狗峠だ。数年前までは「イザリ峠」と呼ばれていたが、名称がよろしくないという理由で改名された。
本来なら目の前にピラミダルな天狗塚とその右後方になだらかな高原状の笹原「牛の背」が見えるが、ガスの中だった。天狗塚で記念撮影後、来た道を戻った。お亀岩のコル近くで、初めてわずかにガスが晴れ、コメツツジの赤い衣をまとった西熊山が見えた。
昔、祖谷から土佐側の上韮生へ買い出しに行ったお亀という女性が、天狗峠を越えて帰る途中で産気づき、岩陰で出産した。しかし母子とも助からず、やがて誰彼と無くその岩を「お亀岩」と呼ぶようになったという。そんな悲しい伝説の地ではあるが、私たちは夕食後、槇ストーブを囲みながら、山の歌をコーラスし、心も身体も暖かなひとときを過ごした。

29日は足元が明るくなるのを待って6時に出発。昨日、天狗塚に登る時に通った道を辿った。地蔵の頭には、旅人の安全を祈る地蔵が祀られている。曇り空ではあるが見通しは良く、西に天狗塚、牛の背、東に西熊山、三嶺、南にこれから向かう綱附森、南西に土佐矢筈山がはっきりと確認できる。トラロープの張ってある急な斜面を一気に下る。ツガの混じる細尾根を辿って行くと、カエデの木にシカかクマらしい四本の深い爪痕があった。しばらく行くと地形もなだらかになり、スズタケも深くなった。道の真ん中にやたらタヌキの糞が多いと思っていたら、クマの糞らしいものもあった。やはり先程の爪痕はクマだったのか。

西熊渓谷へ下る堂床分岐を過ぎ、スズタケの深いダケカンバの疎林を行くようになると綱附森が近づいてきた。胸まであるスズタケの中を泳ぐように進むと綱附森頂上だった。前回と今回のコースである、白髪山〜三嶺〜西熊山〜天狗塚をはっきりと望むことができた。
ゆっくりと休む間もなく矢筈峠に下る。笹原と樹林帯、笹原と樹林帯のくり返しで高度を下げて行く。樹林帯の中は秋真っ盛り。ブナは黄金色にカエデは赤く色づいて美しかった。矢筈峠には「クマ注意」の看板とクマよけの鈴が置いてあった。6月に土佐矢筈山の分岐で親子グマが目撃されたらしい。
駐車場に移動し待望の昼食をとる。次は行程中最後の登り坂がある土佐矢筈山である。登山口からすぐの樹林の中に、この山にふさわしくヤハズアジサイが自生している。雲が薄くなり陽が差して来た。青空をバックに紅葉が美しく映えている。やがて登山道も急勾配となり、汗ばんできた。10月でも暑かった。南斜面で暖かいためか、ノコンギクやリンドウも咲いていた。頂上が近づくにつれガスが出てきた。子供達と犬の出迎えを受けて、土佐矢筈山に到着。この山は高知県側からは道路も舗装され、手軽に登山できるため家族連れのハイカーが多い。記念撮影後、小檜曽山へ向かう。コメツツジ、トサノミツバツツジなどの群落と露岩の点在する稜線を進む。稜線上に小檜曽山の看板があるが、実際の小檜曽山は笹越え分岐の先の1524.7mピークを指す。下山時間も迫って来たので3人は先に下ることにし、残り14人で小檜曽山へ急いだ。飛ぶように往復し、先発者の後を追った。

小檜曽山にて
小檜曽山モミ千本と呼ばれるモミの純林を抜け、ブナやミズナラの大木のある原生林を黙々と下った。時間があればゆっくりとしたい所だった。下山口の近くのカヤ地でやっと先発者に追いつき、京柱峠には予定より1時間遅れてゴールした。峠から西を望むと、出発した時には姿を見せていなかった太陽が、大きく傾いて梶が森の向こうに沈もうとしていた。あらためて今日歩いた縦走路の長さを感じた。遅れを取り戻すべく大急ぎで大豊ICより高速道に入り、吉野川ハイウェイオアシスで入浴を済ませた。徳島からの参加者はとくとくターミナルで下車し、他のメンバーは帰阪した。
【期日】06年10月28日〜29日
【コースタイム】
28日 名頃08・30−三嶺12・00〜12・10−西熊山13・30〜13・50−お亀岩避難小屋14・05〜14・30−天狗峠14・50〜15・00−天狗塚15・30〜15・40−天狗峠16・00−お亀岩避難小屋16・25
29日 お亀岩避難小屋06・00−天狗峠06・30−綱附森09・16〜09・30−矢筈峠11・40〜12・20−土佐矢筈山13・35〜13・45−小檜曽山14・50−京柱峠16・00
【参加者】新井浩、久保和恵、小林京子、阪下悦子、阪下幸一、佐野加代子、重廣恒夫、中島隆、滝由喜子、前田正彰、森澤義信、山内幸子
(他会員外) 岩崎菜穂子、江口富美雄、家段勝好、久米久夫、山本義博
写真: 中島隆
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